彼のお気に入り

ボーイフレンドに「動物園に行こうよ!」という誘われた。
僕の車で、といったきつく念を押される。
私は、まだ彼のことをよく知らない。彼の車に乗りこむことに抵抗を感じていた。
「電車で行こううよ?」
そんなふうに言っても、彼は
「僕の車がいいんだ。」
と、いう。
下心…も、日頃の彼の言動に下心は結び付かない。
かなりシャイな人です。

私は彼の車で行くことに決めた。
若干の不安と共に!
一度、彼は自分の車の写真をメールでさりげなく送ってきた。
背景にすばらしく桜の花が咲いていらっしゃる。
聞けば会社の駐車スペースだという。
「きれいだけど、花びらで僕の車が汚れるんだよね。」
と、返ってきた。
私は車のことはあまり知らない。
運転は始めるけれど、仮にどこかで故障したからには、どこに連絡したらいいのかすらわからない。
それでも彼は私と違って、車をリスペクトやる気持ちが著しいってことがぐっすりわかった。

動物園に行く日がやって来た。
詰め所にさっそうと登場した彼。
彼の車はシルバーのスカイライン。世界中で一番の彼のお気に入り。
いつものおどおどとした物腰はそこにはなく、素敵に女性をエスコートやる独力の男性が私を待っていた。
「とにかく!」
軽快に私をスカイラインの中に迎え入れ、得意気にエンジンをかける。
カーステレオからは、彼自身が編集したであろうミュージックが流行り出す。
なめらかに走り出す車はツーリストへの気遣いに溢れている。

途中、渋滞に合った。
「時間、勿体ないね。」
という私に
「なぜ、そんなこと言うのかな。」
と、彼がいう。
車に乗っていること自体が彼にとってはドライブ。
目的地に付くことも、乗っている過程も両方大事なんだ!
そういう彼に私は凄まじく惹かれてしまった。

動物園では、手をつなごう、そう言っていた彼。
も、車から降りたとたん、目の前に立つのはいつものシャイな人だった。
動物を見ながら、私達は不自然なほどに微妙な距離で歩いていた。
じれったかった。
そういった彼だから、二人の距離が縮まることはそれ以降も無く、
彼とのお付き合いは自然消滅してしまった。

今まで、彼以上になめらかな運転をする人に出会っていない。
あの日、帰りの車の中で沈黙が続いた。
私は彼に一言
「だいぶ、乗り心地のいい車ですね!」
って、伝えた。
彼は笑顔。
「また、お出かけ決める!」
そう、誘ってくれた。
その日が訪ねる日は来なかったけれど…。
素敵な思い出だけが残る。SUVランキング